生成AI投資、資金源はどこから?

生成AI投資、資金源はどこから?

――エンジニアリングソフト固定費を“掘り起こす”米国企業と日本企業のギャップをCxO視点で考えてみました


① 前回のポイント:

生成AIに回す原資は、設計部門で恒常化したエンジニアリングソフトウェア費を圧縮して捻出できる」という表現でした。実際、OpenLM・Open iT などのライセンス最適化ツールを導入した米国メーカーでは 平均 12〜18% のコスト削減が報告されています。浮いた 費用はそのまま生成 AI PoCへ転用され、わずか半年で ROI が見え始めるケースも珍しくありません。


② しかし――設計部門“外”への流出リスク

生成AIは設計領域だけの専売特許ではなく、購買・品質・SCM・営業・管理部門まで適用範囲が急拡大しています。

生成AIの検討や評価のための投資費用を必要としている部門は多くあるのです。

結果として

「設計のために空けたはずのバジェットが、社内コンペで別部門に奪われる」

という現象がすでに起きています。設計部門 CXO が ライセンス最適化 ➞ AI投資 のストーリーを社内で“先取り”しなければ、浮いたお金が他部門に吸収されることになりかねません。


③ 米国企業はどうしているのでしょうか?“横取り”?“再投資”?

資金源調達ロジック実例&データ
① 既存IT/DX予算のリシフト成熟領域(ERP更改、オンプレ更新)のタイミングを後ろ倒しし、生成AI枠を創出*先送り可能な予算を洗い出して生成AI向けの投資を優先IT予算が伸びているが、生成AIに使われている
② ライセンス最適化で既存コストの削減FlexNet / CATIA など同時接続ライセンスの実使用率を可視化し、ベンダと再交渉する多くの企業がAI予算増しているが多くは“既存費削減分”を原資としている
③ M&Aで“時間を買う”基盤モデルやAI関連専門スタートアップを丸ごと買収多くの経営者が「外部資本も合わせAI投資を拡大」と回答

ポイント

 横取りされずに自部門で再投資するためのポイント

  • 「ライセンス費 → AI」 は CFO から見て“自己資金のねん出”に映るため、稟議が通りやすい
  • IT・設計系部門は ライセンス使用率レポートを月次で提示し、削減額=AI再投資案を同時に上申する

④ 日本企業:レガシー刷新との二重負担で遅れがちかもしれない

  • DX基幹刷新(2025年の崖)円安で膨張した外貨建て保守費 が重しとなり、「削減した設計費をAIに回す」まで予算が回りにくい構造
  • 日本の生成AI導入率は大企業で 90 % を超える一方、中堅層では 40 % 台にとどまり、PoC止まり案件が多い
  • ライセンス管理ツール活用が進んでおらず、使用率データが無い=交渉材料が無い ため契約見直しが進みにくい
  • ライセンス管理ツール自体がコストアップと捉えられてしまう(その先に起こるコストダウンを説明しきれない)

⑤ CxOが取るべきアクションプラン(設計部門として)

  1. 使用率データの取得を最優先
    • OpenLM などを導入し、稼働率が低いライセンスを特定
  2. 「削減額=AI投資枠」宣言
    • 浮いた コスト を部門内プールとして“ロック”し、他部門流用を阻止
  3. 3か月タイムラインでPoC
    • コスト削減レポート提出 → 生成AIツール実証を同年度内完結で稟議

⑥ まとめ

「設計ライセンス費を削って“自部門AIファンド”を持つ」

  1. 使用率の見える化、2) 削減額の即時AI投資化、3) 社内横取りを防ぐガバナンス が三位一体で必要です。

次回は、実際にライセンス稼働率レポートを作成し、半年で1000万円規模の浮いた費用を確保した日米企業のケーススタディを紹介します。

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