CAD・CAEライセンス最適化という「誰も困っていない問題」

CAD・CAEのライセンス利用状況を可視化しませんか、と話をすると、なぜか多くの人が「ライセンスを減らされる」と身構えます。

しかし、私はコストを下げようと言っているわけではありません。ライセンスの購入数を減らそうとも言っていません。

私が言いたいのは、もっと単純なことです。

すでに持っているライセンスの「使われていない時間」を最大限活用できるように、仕事のやり方を変えてみませんか?

ところが、この話を関係者に持っていくと、それぞれに違った反応が返ってきます。

⚠️ 課題

CAD・CAE利用部門に聞いてみた

まず、実際にCAD・CAEを使っている技術部門に聞きます。

「ライセンスの利用状況を可視化して、空いている時間をもっと有効に使えるようにしませんか?」

すると、こう返ってきます。

うちは、いつもライセンスが足りないくらい使い切っています。減らすことなんてできません。減らせないものを可視化するためにコストをかけても意味がないでしょう。

私は「減らしましょう」とは言っていないのですが、相手の頭の中では、すでに数本のライセンスが没収されています。

そもそも「いつも使い切っている」という言葉も、よく考えると不思議です。

本当に24時間365日、すべてのライセンスが使われているのでしょうか。

昼休みも、会議中も、夜間も、休日も、計算と設計が止まることなく続いているのでしょうか。

利用状況を正確に計測していなくても、「足りない」という感覚はあります。必要なときに使えなかった経験があるからです。

しかし、ある瞬間に足りなかったことと、一日中使い切っていることは同じではありません。

道路が朝8時に渋滞しているからといって、深夜2時まで渋滞しているわけではないのです。

必要なのは道路を減らすことではありません。空いている時間や迂回路を把握し、渋滞を避けるように仕事の流れを変えることです。

IT部門に聞いてみた

次に、技術部門のシステムを管理しているIT部門へ行きます。

「ライセンスの使われていない時間を可視化し、部門全体で有効活用できるようにしませんか?」

すると、こちらも明快です。

契約管理やライセンスサーバーの管理は、利用部門の代わりに行っています。ただし、アプリケーション費用は利用部門が管理しています。IT部門はコストマネジメントには関与していません。

IT部門は契約を管理しています。
サーバーも管理しています。
障害が起きれば呼ばれます。
更新時期も把握しています。

しかし、使われ方とコストには関与しません。

利用状況が分からない状態でコスト管理まで引き受けると、大変な仕事になるからです。

ここでも、私は「IT部門にコスト削減の責任を持ってください」と言っているわけではありません。

例えば、次のようなことを知りたいだけです。

  • ライセンスが混雑する曜日や時間帯はいつか
  • 起動したまま使われていないライセンスはないか
  • 長時間の解析を、空いている夜間に実行できないか
  • 部門ごとに分かれているライセンスを共有できないか
  • ジョブの実行順序や予約方法を改善できないか
  • 必要な人が必要なときに使える状態になっているか

これは、単なるコスト管理ではありません。

IT部門が持つ運用情報と、利用部門が持つ業務情報を組み合わせて、限られたライセンスをより使いやすくする仕事です。

ところが、可視化すると新しい課題が見つかります。そして課題が見つかると、誰かが改善しなければなりません。

そのため、ときには次のような結論になります。

見えなければ、少なくとも仕事は増えない。

火災報知器を設置すると、火事への対応まで考えなければならなくなります。だから火災報知器を設置しない、というほど潔い判断です。

CAD・CAE販売会社にも聞いてみた

最後に、CAD・CAEを販売している会社へ行きます。

「お客様に利用状況を可視化してもらい、今あるライセンスをもっと有効に使えるようにしませんか?」

すると、少し複雑な表情になります。

最近はライセンス販売を増やすのも簡単ではありません。お客様のコスト削減は、当社にとっては売上削減です。ですから、利用状況を細かく可視化するソフトウェアは、できれば使ってほしくありません。

ここでも、「有効活用」がいつの間にか「契約削減」に翻訳されています。

しかし、ライセンスの利用効率を高めることと、ライセンスを減らすことは同じではありません。

可視化した結果、本当に足りなければ、追加購入の必要性をデータで説明できます。

「現場が足りないと言っています」ではなく、

毎週火曜日の午前中に利用率が上限に達し、毎月合計30時間の待ち時間が発生しています。

と説明できるようになります。

これは販売会社にとっても、本来は悪い話ではありません。

感覚による追加要求ではなく、利用実績に基づいた提案ができるからです。顧客も、必要性を理解したうえで購入できます。

売らないための可視化ではなく、必要なものを必要なだけ、納得して買うための可視化です。

私が減らしたいのは、ライセンスではなく「待ち時間」

利用部門は「減らされたくない」と考えます。
IT部門は「仕事を増やしたくない」と考えます。
販売会社は「売上を減らしたくない」と考えます。

しかし、私はライセンスを減らそうとしているわけではありません。

減らしたいのは、例えば次のようなものです。

  • エンジニアがライセンスを待っている時間
  • 使われていないライセンスが眠っている時間
  • ジョブが実行できずに止まっている時間
  • 必要性を説明できないまま社内調整を続ける時間
  • 根拠のない「足りない」「余っている」という議論

そして増やしたいのは、設計、解析、検証にライセンスが実際に使われる時間です。

重要なのは、所有しているライセンスの本数だけではありません。

ライセンスは、購入しただけでは価値を生みません。エンジニアの仕事に使われて、初めて価値を生みます。

100本のライセンスを契約していても、仕事の都合で十分に使えていなければ、その能力を活かし切れていません。反対に、50本しかなくても、実行時間や利用順序、部門間の共有を工夫することで、より多くの仕事を進められる可能性があります。

これは節約の話ではなく、生産性の話です。

可視化は「減らすため」ではなく「変えるため」

利用状況を可視化する目的は、使っていないライセンスを見つけて回収することではありません。

使われていない時間を見つけ、その時間を仕事に変えることです。

例えば、夜間に空いているなら、解析ジョブを夜間に回せるようにする。特定の時間帯に利用が集中するなら、作業計画や予約方法を見直す。部門ごとに繁閑の差があるなら、共通利用の仕組みを検討する。ライセンスをつかんだまま放置されているなら、運用ルールを改善する。

可視化された数字を見て終わるのではありません。

その数字を材料にして、仕事の進め方を変えるのです。

そして、仕事のやり方を変えてもなおライセンスが足りないのであれば、そのときは堂々と追加購入すればよいのです。

利用データは、削減の根拠だけではありません。必要な投資を正当化する根拠にもなります。

私が提案しているのは、ライセンスを減らすための仕組みではありません。

今あるライセンスが眠っている時間を、エンジニアが価値を生み出す時間に変える仕組みです。

ところが「利用状況を可視化しませんか」と言った瞬間、利用部門は防御態勢に入り、IT部門は担当外を宣言し、販売会社は売上への影響を計算し始めます。

まだ誰もライセンスを一本も減らすと言っていないのに、です。

CAD・CAEライセンス可視化の本当の難しさは、データを集めることではないのかもしれません。

「可視化=削減」という、関係者の頭の中にいつの間にかインストールされたソフトウェアを、まずアンインストールすることなのです。

まずはROI診断から

OpenLMによるROI診断では、単純な削減額だけを見るのではなく、ライセンス待ちによる損失、利用が集中する時間帯、空いている時間を活用できる可能性などを確認します。

目的は、ライセンスを減らすことではありません。減らすべきか、増やすべきか、使い方を変えるべきかを、事実に基づいて判断することです。

健康診断を受けたからといって、必ず食事を減らされるわけではありません。栄養が足りなければ、むしろ食べるように言われます。ライセンスのROI診断も同じです。

OpenLMによるエンジニアリングソフトウェアROI診断の詳細はこちら