長期デフレで、日本企業は投資の仕方を忘れたのか

日本では長い間、物価が上がりにくい時代が続きました。日本銀行も、1990年代後半以降の日本経済を振り返り、慢性的な需要不足や賃金・物価が上がりにくい構造について分析しています。

この環境では、企業にとって「買わない」「更新を先延ばしにする」「今あるものを使い続ける」ことが、しばしば合理的な判断でした。価格が急に上がらず、待っても損をしにくかったからです。

失われたのは投資意欲だけではない

長期デフレが企業に残したものは、単なる節約志向ではありません。私は、現場から経営層まで「投資を検討し、効果を測り、次の投資につなげる経験」そのものが少なくなったのではないかと考えています。

担当者は、購入提案よりも既存予算の維持を求められる。管理部門は、新しい投資の効果よりもコスト削減を説明する。経営層も、投資をしないことによる機会損失より、支出した結果が外れるリスクを重く見る。この習慣が何年も積み重なると、「何に投資すべきか」を考えるより、「なぜ買わなくてよいか」を考えるほうが得意になります。

インフレ時代には「何もしない」にもコストがある

しかし、物価、賃金、エネルギー、クラウドサービス、ソフトウェアの価格が動く時代には、去年と同じ契約を続けるだけでもコストは変わります。投資を見送る間に、技術者の作業時間や開発スピードで競合との差が広がることもあります。

つまり、「買わない」は安全な現状維持ではなく、選択肢の一つです。これから必要なのは、支出を避ける力だけではありません。限られた予算を、どこへ配分すれば最も大きな成果が出るのかを判断する力です。

管理の目的も変わる

この変化は、CAD・CAEなどのエンジニアリングソフトウェアにも当てはまります。従来のライセンス管理は、契約数や期限を把握し、余計な購入を避けることが中心でした。しかし今後は、どのソフトウェアが、どの業務で、どれだけ価値を生み出しているかを把握する必要があります。

デフレ時代のライセンス管理は「買わずに済ませるための管理」でした。これからは「どこへ投資すればエンジニアの生産性が上がるかを判断するための管理」へ変わる必要があります。

次回は、なぜ従来のライセンス管理が「購入を避ける管理」になったのか、そして「管理できている」と「活用できている」の違いを考えます。

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